天皇、皇后両陛下の長女・愛子さまは3日、東京都内で開かれた「第23回世界災害救急医学会」の開会式に出席した。公務で初めておことばを述べ、「全ての人の尊厳が守られ、適切な医療や保健サービスを受けられる体制の構築は、非常に重要であると考えます」と語った。
この会議は日本学術会議と同医学会組織委員会が共同して主催する国際会議。
愛子さまは、世界における災害が激甚化・頻発化するなかで「災害医療や、救急医学の重要性はこれまでにも増して高まってきている」として、同会議が「これからの時代を担う若い世代に、皆様の豊かな経験や知識を継承する機会として意義深いものとなることと思います」と語った。
愛子さまはこの会議に向け、4月23日に皇居・御所で、同学会の組織委員長を務める大友康裕・独立行政法人国立病院機構災害医療センター病院長らから進講を受けていた。愛子さまが1人で進講を受けたのも初めて。
愛子さまのおことば全文は次の通り。
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本日、第23回世界災害救急医学会の開催に当たり、多くの国と地域の災害救急医療の専門家や研究者の皆様と、この開会式に出席できますことをうれしく思います。
世界災害救急医学会は1976年の創設以来、災害対応や緊急人道支援を始め、救急医療、公衆衛生施策、健康危機管理などの分野において、学術面では研究を通じた知見の蓄積や共有、実践面では災害時における医療体制の強化など、両者の質の向上に大きな役割を果たされてきました。災害医療と救急医学の発展に尽力されてきた関係者の皆様に、心から敬意を表します。
災害医療の現場では、限られた資源と厳しい時間の制約の中で、一人でも多くの命を救うための難しい判断が求められます。そして、急性期医療の提供にとどまらず、高齢者や障害者、外国人、妊産婦や乳幼児など、特にサポートを必要とする方々への支援体制の確立や、被災者の心のケアを含む健康維持のための中長期的な支援も不可欠です。全ての人の尊厳が守られ、適切な医療や保健サービスを受けられる体制の構築は、非常に重要であると考えます。
この第23回世界災害救急医学会は、世界中の災害医学や救急医学、保健学、危機管理学等の学術関係者と医療従事者の知見を結集し、災害時の保健医療体制の強化を目的として開催されると伺っています。
近年、世界における災害が激甚化・頻発化する中で、災害医療や救急医学の重要性はこれまでにも増して高まってきていると思われます。阪神・淡路大震災、東日本大震災を始め、数々の大きな災害を経験してきた日本では、災害医療体制に様々な側面から変革を加え、進化させてきました。この会議は、それらの経験とこれまでに得られた知見や技術を共有する貴重な場であり、更なる国際協力を推進する機会として、また、これからの時代を担う若い世代に、皆様の豊かな経験や知識を継承する機会として意義深いものとなることと思います。
この会議が災害医療及び救急医学の進展、並びに国際協力の深化に寄与する実り多きものとなることをお祈りし、開会式に寄せる言葉といたします。