8月に60歳を迎える俳優の別所哲也さん。俳優人生のターニングポイントになった作品は、ミュージカル「レ・ミゼラブル」といいます。演出を手がけていた英国の巨匠ジョン・ケアードさんからかけてもらった、忘れられない言葉について語ってもらいました。
憧れの帝国劇場で上演されるミュージカル「レ・ミゼラブル」。30代のとき、オーディションでジャン・バルジャン役を射止めた。
当時、テレビドラマや映画を中心に活躍していた。撮影ではカメラに正対することはなく、むしろカメラを意識せず物語の空間に向かってセリフを言うのが普通だった。
ところが、レミゼは全編セリフが歌で進み、お客さんに向かって歌い、語りかける。コンサートでもないのに、自分は誰に対して何をやっているのだろう? 稽古を重ねていたころ、演劇空間の中にいない人に対して語りかける感覚が、うまくつかみきれなかった。プレッシャーも重なり、悩んでいた。
そんなある日、演出を手がけていた英国の巨匠ジョン・ケアードさんに呼び出された。
「哲也、どうしたんだ」
正直に打ち明けると、ジョン…