わらべうたや仕事歌の調べから懐かしい情景を呼び起こす女声合唱曲集「伊予のひめうた」が12日、松山市民会館で、作曲家・指揮者の松下耕さん(62)による指揮で披露される。2023年に出版された増補版での演奏は、愛媛初演になるという。
地元の女声合唱団「歌姫」と、松下さんが育てた東京の新進合唱団「The Ladies’ Vocal Artists Antheia」(アンティア)によるジョイントコンサート。最終ステージで、両団の合同演奏として披露される。
民謡をもとにした3曲
「伊予のひめうた」の曲はいずれも、愛媛県の民謡にもとづく創作だ。地域の名所や仕事の模様などを織り込んだ歌詞に擬音を交え、ソロパートを含む合唱が緩急に富んだ音楽を展開。いにしえの愛媛の風景を情感豊かに奏でる。
2004年に「歌姫」が「合唱コンクールで郷土の民謡を演奏したい」と、作曲家の松下さんに委嘱したのが曲集を作るきっかけだった。
曲集は当初、旧城川町(現西予市)で歌われていたお手合わせ歌「いの字いっさいこく」と、現在の新居浜市に伝わる「新居の麦打唄(むぎうちうた)」をもとにした2曲だった。
2023年、アンティアが内子町由来の「内子の紙漉唄(かみすきうた)」を初演。同年に全3曲で成る増補版楽譜が出版された。
愛媛の旋律の美しさ知って
松下さんは東京国際合唱機構代表理事を務めるなど、国内外で活動している。「歌姫」は松下さんと関わりが深く、共にハンガリーまで演奏に赴いたこともある。
「歌姫」を創団し、長く指揮者を務めた森岡美香さん(60)は、曲の初演当時、幼かった息子の希望(のぞむ)さん(23)を連れて「歌詞に出てくる新居浜の神社などを取材しに行った」と振り返る。希望さんは長じて母と同じ合唱指揮者になり、このコンサートにもスタッフとして参加する。
「歌姫はきょうだい、アンティアは娘のような存在。二つの『家族』をつないだ『伊予のひめうた』を松山で演奏したいと思った」と松下さん。「美しい景色、温かい人情にあふれた愛媛県の素晴らしさを表現したい。県民の方にも、愛媛の旋律がどれほど美しいか再確認してほしい」
午後6時開演。両団体の単独演奏のほか、公募で集まった愛媛の若い歌い手らが、松下さんの曲を松下さんの指揮で歌うステージもある。入場料は一般2千円、高校生以下500円。問い合わせは森岡美香さん(090・9456・6191)。