ボールを放り、落下するまでの間に手をたたく訓練。天井までの距離に併せて力加減を習得するのが狙い=2024年8月6日、横浜市港南区の横浜刑務所、久保田一道撮影

 懲らしめから立ち直りへ――。懲役刑を廃止し、受刑者の更生に向けた指導の充実を図る「拘禁刑」の導入が、来年6月に近づいている。全国の刑務所は、「出所後」を見据えた取り組みを手探りで進めている。(久保田一道)

「覚える」「伝える」訓練

 「このポーズを覚えてください」。8月上旬、横浜刑務所(横浜市港南区)の一室で、敬礼のようなポーズをとった教官が、男性受刑者にそう語りかけていた。

 教官がポーズをやめると、今度は男性受刑者が目で見て覚えた姿勢を、言葉だけで別の受刑者に伝える。「足を開いて」「右手は顔に」――。

 横浜刑務所が今春から試行している訓練の一つで、集中力や、器用な動作に難がある人の能力を高めるためのものだ。

 再犯者を中心に約800人が服役する横浜刑務所では、入所前の検査で、日常生活に何らかの支援が必要と判定され、木工や印刷など集団での刑務作業が難しい受刑者が一定数いる。こうした受刑者について現在は、刑務作業の内容を清掃や花の手入れなど簡易なものに変えることがある一方、個々の特性に応じた訓練や教育に割く時間は十分ではない。職員のひとりは「出所後に仕事に就いてもミスを重ねたり、ささいなことでトラブルになったりすることがある」と話す。

 来年6月に「拘禁刑」が導入…

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