Smiley face
写真・図版
世界ダウン症の日2025を啓発するポスター=日本ダウン症協会提供

 3月21日は世界ダウン症の日。日本でも各地で、ダウン症への理解を深めるためのイベントが開かれている。ダウン症のある人の寿命がのびていることに伴い、近年、成人期のダウン症候群診療ガイドラインの日本語版が公開されるなど、医療的な支援も少しずつ進んできた。ただ、ダウン症のある人が年齢を重ねて、これまでできたことができなくなるなど、家族が戸惑うこともある。ダウン症の成人期医療について、東京慈恵会医科大病院遺伝診療部の竹内千仙准教授に聞いた。

  • ダウン症の「のぶくん」が消えた 40代で現れたアルツハイマー症状

 Q 国内でダウン症のある人は何人ぐらいと推定されますか。

 A ダウン症候群のある人は8万人程度と推測されていますが、実際の人数はわかっていません。厚生労働省の研究班を立ち上げ、生まれたダウン症の赤ちゃんの人数を確認する作業を試みています。この少子化の流れで、ダウン症のあるお子さんも減っており、現在は半数以上が成人と考えられています。

 Q ダウン症のある子どもにはどんな合併症がありますか。

 A 小児期では、4割ぐらいのお子さんに先天性心疾患があるとされています。今では手術を受けて、心疾患によって亡くなることはほとんどなくなっています。血液系の合併症や甲状腺機能低下症などもあります。中耳炎による聴力低下も、実はとても多い合併症です。

 ほかのお子さんの倍ぐらいの時間をかけてゆっくり発達します。ただ、歩けないお子さんは基本的にいませんし、言葉も獲得して集団生活やコミュニケーションは可能です。小学生ぐらいになるとすごく丈夫になるので、病院の受診頻度が減り、そのまま医療機関との接点がなくなり、そのまま成人になることも少なくありません。

 ただ、そうなると、成人した後、急に医療機関を受診しても、小児期に何があったのかがまったく分からなくなってしまいます。18歳までは年に1回、定期的に小児科の主治医を受診し、成人に移行する前に合併症の評価を受けて、20代でかかりつけ医を持つことを勧めています。

 Q 成人後にはどういう合併症がありますか。また、どのような医療機関を選べばよいでしょうか。

 A 成人期の甲状腺異常や高尿酸値血症が4割ぐらいの人にあります。ただ、甲状腺の機能は通常の健康診断では受けられないため、かかりつけ医の先生に診てもらうことが望ましいです。

 「遠くの名医よりも近くのかかりつけ医」として、まずは自宅のある医療圏の内科を勧めます。ダウン症に詳しい医師は少ないので、かかりつけ医はダウン症の専門でない医師でもよいです。保護者のかかりつけの先生に一緒に見てもらうのもよいと思います。普段の状態を知っている身近なかかりつけ医は大切です。

 ダウン症ではアルツハイマー病のリスクが高く、40代以降になると、認知機能や性格にも変化が出てくることがあります。

 Q 朝日新聞の医療相談「どうしました」のコーナーに、ある保護者から「手のかからない息子だったのに、30代後半になって、ずっと通っていた就労継続支援事業所に通えなくなり、家から出られなくなった」という悩みが寄せられました。

  • 連載「どうしました」はこちらから

 A 誰でも年齢を重ねるといろんな生活の経験をして、当然性格や好みは変わるものです。ダウン症のある人は成人になるとこだわりが強まる傾向にありますが、生活上でのつまずきやストレスを抱え込むことがあっても、自分から行動を起こすことが難しい。その中で何らかの意思表示をしている可能性があるので、まずは親御さんが落ち着いて、息子さんの気持ちを尊重してあげるのがよいと思います。

 そのうえで、体調面でつらいことがないのかの確認が必要で、事業所に行きたくなくなったきっかけを探していくことも必要かもしれません。ダウン症のある人では40代から老化の症状が出てくることもありますので、30代になって、体力的につらくなっていることも考えられます。就労支援よりも日常生活支援を重視して、生活介護事業所にうつる人も少なくありません。

 Q 保護者もどうしたらよい…

共有