ロシアに1万人規模の兵士を送り込み、ウクライナとの交戦が近いともみられている北朝鮮。国内の人々はどんな暮らしを送っているのか。兵士の子供を持つ親はどんな思いなのか。北朝鮮の情勢に詳しい李徳行(イドッケン)・元韓国大統領府統一政策秘書官は「兵士が生きて帰っても戦死しても、体制に大きな影響を与えるだろう」と語ります。
【連載】読み解く 世界の安保危機
ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ270人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。
――李さんは過去に16回も訪朝したそうですね。
1999年から2015年にかけ、平壌や開城、金剛山、妙香山などを訪れました。北朝鮮側からは「1人で出歩くな」と言われましたが、朝夕に外出して、通退勤する北朝鮮市民の姿もよく見ました。
北朝鮮では交通事情が良くないことや、職場が住居の提供に責任を持つことから、職住接近のケースが多いようです。私が会談した朝鮮赤十字会の幹部も「自宅が職場から徒歩15分くらいの場所にある」と話していました。
――政治的な意図があるのでしょうか。
同じ階層や職場の人々を同じ区域に集めているようです。朝鮮労働党の幹部らは、金日成(キムイルソン)広場や平壌駅がある平壌市中区域に集中的に住んでいます。相互監視をさせる意味があると思います。
また、北朝鮮の市民生活の特徴の一つに共同作業(集団生活)があります。雪が降ると、同じ地域の(20~30世帯でつくる)人民班に所属する人々が集まって除雪作業をします。平壌から妙香山に向かう高速道路を使用した時、地域の住民が集まって道路の補修工事をしている姿を目撃しました。
行政が公共事業を行う余裕が…