2030 SDGsで変える
戦争の反対語は単に「平和」ではなく、対話を続ける努力をすること――。先の戦争を経験した世代が減り、記憶の継承が課題となるなか、立場や世代を超えて平和について考え、語り合う試みが進められています。戦後80年の夏に紡ぎ出されている言葉を追いました。
見えない空間で被爆前の広島を体験
ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」は東京・竹芝にある。
光を完全に遮断した暗闇を探検して気づきを得る「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(暗闇の中での対話)」というプログラムを提供している。ドイツの哲学者の発案で生まれ、日本ではこれまでに約30万人が体験した。
7月から新たに始まった「ピース・イン・ザ・ダーク」は文字通り、平和がテーマだ。「戦争体験者の声が届きにくくなるこれからの時代には、いまを生きる私たちがどう平和を考え、他者と語り合えるかが問われている」との問題意識から考案された。
見えない空間では、お互い対等になり助け合いが生まれる。そのため、終わった後は初対面でも話が弾む。この効果を利用して、ともすると大きすぎたり遠すぎたりする平和に思いをめぐらせ、言葉にしてもらうのが狙いだ。
最大8人で、1945年8月6日までにあった広島の戦時下の暮らしを感じる「旅」に出る。暗闇を案内するのは、視覚に障害のあるアテンドと呼ばれるスタッフだ。「小さいけれど大切なことを見つけてみて下さい」と声をかける。
体験を終えた後、参加者同士で「平和のためにしたいこと」を文字にする。ガールスカウト埼玉県第7団から参加した小学5年生の堀口あかりさんは「今を守るために、今あるものを大切にしていく」。4年生の渡邊琴葉さんは「楽しいと思った時を大切にする!」と書いた。
戦後80年が90年、100…