「良い人生だった」。阿南惟茂さん(左)は妻史代さん(右)に手を握られ、自宅で穏やかに逝った=2024年2月撮影、遺族提供

 駐中国大使を務めた阿南惟茂(あなみこれしげ)さんが昨年11月13日、間質性肺炎のため、83歳で亡くなった。戦後の対中外交を支えてきた外務省の中国専門家集団「チャイナスクール」の顔だった。政治体制は違っていても、二度と戦争はしない関係の維持と発展に尽くした。

 「満州の夕日はほんとうに赤く、大きい。おい、赤ワインを頼もう」

 1983年6月、緑の快速列車が中国東北部、旧満州を走っていた。がらがらの食堂車で、北京の日本大使館で参事官を務めていた阿南さんは、向かいに座る書記官の斎藤法雄さんに声をかけた。

 こんな古びた列車に赤ワインはあるのか? 斎藤さんの心配をよそに、中国製のボトルが出てきた。大地に沈む夕日に感嘆しながら、阿南さんはワインを飲み始めた。

 鉄鋼産業の都市、鞍山(遼寧…

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