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映画「80年後のあなたへ」のワンシーン=私の卒業プロジェクト提供
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 東邦高校(名古屋市)の生徒たちの働きかけで昨年制定された「なごや平和の日」。あれから1年が経ったが、このままでいいのか――。そんな思いを抱える高校生たちを描いた映画「80年後のあなたへ」が16日に全国で公開される。

 軍用機生産の拠点だった名古屋市は、1942~45年に63回の空襲を受け、約8千人が犠牲になった。44年12月13日には、東邦高校の前身である商業学校の生徒・教員計20人も、軍需工場への動員中に空襲に遭い、亡くなった。学校で慰霊行事を続けてきた生徒会が2014年から市に働きかけ、5月14日が「なごや平和の日」に制定された。名古屋城天守が炎上し、多くの人が犠牲になった日だ。

 「終戦から80年が経ち、体験者がいなくなる中で、高校生が主導して平和を継承する動きがあるなんて、とても驚いた。まさに映画のような話だと思った」

 プロデューサーの高石明彦さん(49)はこう話す。

 制作にあたり、制定に関わった生徒たちにインタビューすると、口をそろえて「平和の日を制定して終わり、ではだめだ」と語ったという。

 「平和の授業を義務教育化したい」「絵本を作りたい」「音楽で語り継ぎたい」……。先を見据える生徒たちの思いに触れ、「なごや平和の日」の制定という実話をベースにしながら、若者が未来に向かう姿を描くと決めた。

 「戦争映画に抵抗がある人に、平和を伝えるにはどうすればいいか。そこに一番こだわった」という高石さん。集団疎開先で被害の少なかった愛知県犬山市もロケ地に選び、名古屋市との対比を表現。戦後80年という節目に過去に思いを巡らせながら、恋愛や進路に悩む高校生のリアルな姿をみずみずしく描いた。

 家業を継ぐか進学するか苦悩する役を演じた中川翼さん(19)は、「これまで、戦争は歴史のテストに出るものという意識が強かった。でも撮影で戦争遺構や資料館を訪れ、今と地続きの話だということが自分の中でやっと結びついた」と話す。

 生徒会長役の渡邉このみさん(18)は「戦争がテーマだけど、悲惨な描写はない。映画を見た後に、ポジティブな気持ちで平和について考えてもらえたら」と話した。

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