■論壇時評 政治学者・谷口将紀
参院選は与党の大敗に終わった。無党派層の支持を得られないばかりか、自党支持層まで縮小し、歩留まりも低下するというのが、自民党に限らない与党敗北のパターンである。とりわけ今回は、岩盤保守層の自民離れが目立った。自民優位が揺らぐ可能性の一つとして政治学者砂原庸介が挙げた、小選挙区(一人区)で野党が一定程度協力した上で、自民が新興右派政党に票を奪われるというシナリオ(①)が現実になった。
石破首相を「国難」 保守3誌に見えた変調
変調の兆しは、公示前に刊行された保守系誌に見えていた。「WiLL」では政治ジャーナリストの石橋文登が、自民党の存在意義が失われつつあるとして、石破茂総裁の罷免(ひめん)を求める両院議員総会の開催を訴えた(②)。産経新聞の阿比留瑠比も、「正論」において、石破おろしを実現しなければ自民に活力は戻らないと批判する(③)。極めつきは「Hanada」で、ジャーナリストの堤堯(ぎょう)が、石破首相の存在自体を「国難」とまで呼び、早く辞めさせないと日本沈没と断じた(④)。
参院選では物価上昇が最も大きな争点となった。対策として、各党はこぞって減税や給付を掲げたが、減税は実施まで時間を要する。給付も、低所得だが金融資産を保有している人も対象になるなどの課題があり、実務を担う自治体の負担増も懸念される。長期金利など市場の反応も要注意だ。公正かつ効率的な給付の実行が求められる中で、マイナンバーの活用が所得や資産、税・社会保障の負担に応じた適正な給付を可能にする、という元財務省の森信茂樹の指摘は重要だ(⑤)。公金受取口座登録を促進すべきだという財政学者佐藤主光(もとひろ)の主張にも耳を傾けるべきだろう(⑥)。
谷口将紀さんによる月1回の「論壇時評」の第4回です。
今回は、コメ高騰の解決策についての議論から、国際政治学者ジョセフ・ナイの遺稿まで、計14個の論考を紹介します。
■コメ高騰の解決策は? 農地…