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戦時中の写真を見せながら児童に説明する山口研一さん(右)=2025年5月26日、神奈川県愛川町春日台2丁目の中津第二小学校、中島秀憲撮影
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 戦後80年に合わせ、神奈川県愛川町は子どもたちに戦争の悲惨さを伝え平和の尊さを考えてもらおうと、町立小学校6校の全小6児童を対象に「平和伝承教室」を企画した。5月26日には中津第二小で初回が開かれた。

 同町には戦時中、相模陸軍飛行場があり、10代の少年飛行兵が訓練を受け、特攻隊に配属されて戦死した若者も少なくない。

 この日は、町郷土資料館の山口研一学芸員(66)が講師となり、53人の児童に戦時中の写真を見せながら、当時の様子を説明した。

 山口さんは、かつて桑畑だった土地が、戦争で飛行場になり、男性だけでなく女性も働いていたこと。小学生が石拾いを手伝っていたこと。戦争の状況が厳しくなると、若者が特攻隊として出撃していったこと。町内でも空襲があり、命を奪われた人がいたことなどを語りかけた。

 戦時中に約310万人の日本人が亡くなり、愛川町の人口約4万人の80倍近くにもあたるとして、「多くの犠牲があったことを忘れずに君たちは生きて、平和な世の中にしていってもらいたい」と述べた。

 話を聞いた四宮沙紀さん(12)は「戦争には女性もかかわっていたなど、全然知らなかったことを知ることができた」。渡辺旬さん(11)は「戦争がどれだけ恐ろしいかが分かった。特攻隊の話を聞き、今に比べて命が軽く扱われたように感じた」と話した。

 飛行場は戦後、工業団地になり、今の町の経済を支えている。戦後80年を機に、平和伝承教室を企画したことについて町の担当者は、「平和教育にはこれまでも取り組んできているが、専門家の話を聞くことで、決して人ごとではない、ということに気づいてもらいたいと考えた」という。

 6月12日までに、ほかの5校を巡回し、計約290人の小6児童が山口さんから話を聞く予定。

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