貿易とどう向き合うかは、米国史を通じて時に国を二分する争点となってきました。米通商史の大家ダグラス・アーウィン氏は、第2次トランプ政権の通商外交は戦略性のなさが顕著で「世界は恐ろしく不確実な、未踏の領域に入った」と指摘します。
――米国は過去にも保護主義や高関税政策を推し進めた局面があります。相互関税の導入など、第2次トランプ政権の通商外交はどう位置づけられますか。
「平均2%程度だった米国の関税は、第2次政権の関税引き上げで、一気に10%台後半から20%台前半につり上がりました。その急激さが第2次政権の特徴です。(世界大恐慌後に導入されて悪名の高い)1930年のスムート・ホーリー関税法ですら、既に関税率の土台が高いところからの漸増でした」
「『ルールというものが問題にすらならない』のも特徴です。トランプ氏は第1次政権で『米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)』に自ら署名したのに、カナダやメキシコを関税で脅しています。世界貿易機関(WTO)を中核とするシステムは終わり、世界は今後の通商関係を予見するための支えを失いました。恐ろしく不確実な、未踏の領域と言えます」
――第1次政権も、関税を武器に中国などに「貿易戦争」を仕掛けましたが、当時との違いは何ですか。
「第1次政権の通商外交を主…