手錠と腰縄=有元愛美子撮影

 大阪弁護士会は、刑事裁判の法廷内で被告に手錠や腰縄をつけないよう国や裁判所に求める決議をした。「自尊心を傷つけ、羞恥(しゅうち)心を抱かせるだけでなく、周囲に有罪との印象を与える」と指摘し、深刻な人権問題だと訴えた。

 11日付。弁護士会としての決議は全国で初めてとみられる。

 刑事訴訟法は「公判廷においては被告の身体を拘束してはならない」と定める。だが実際は、裁判官が入廷後、開廷を宣言してから閉廷を告げるまでの間だけが「公判廷」と解釈されている。

 そのため被告が法廷に入ってから、裁判官が入るまでの間は、手錠・腰縄をつけられた被告の姿が傍聴人から見えることになる。

 これまで問題視されてこなかったが、大阪弁護士会は2017年4月、全国に先駆けてこの問題に取り組むプロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、傍聴人にはその姿を見せない運用が定着している欧州や韓国など海外事例の調査や、裁判所に配慮を求める申し入れを続けてきた。

 19年5月には、大阪地裁に起こした民事裁判で、手錠・腰縄姿を「みだりに公衆にさらされたくない」という気持ちは「法的な保護に値する」とする判決が言い渡された。解錠後に傍聴人を入れる方法や、廷内についたてを置く方法を提案した判決は、そのまま確定している。

 PTメンバーで原告代理人を務めた田中俊弁護士は「弁護人の目の前で人権侵害行為が行われている現状を正すためには、裁判所に指摘し続けないといけない。弁護士から大きな潮流を起こしていきたい」と話す。

 11日の決議では「弁護士自身が長らく見過ごしてきた問題であることを深く自覚し、解消に向けて積極的に取り組む必要がある」とも言及。そのうえで、裁判官に対して「やむを得ない場合」を除き、手錠・腰縄を使わないことを求めた。

  • 手錠・腰縄について考える連載「見られたくない」はこちらから

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