若い職人が腕を競う「技能五輪全国大会」の造園部門で、奈良県立磯城野(しきの)高校環境デザイン科の山本拓夢(たくむ)さん(2年)が金賞に選ばれた。高校生の金賞受賞は大会史上初の快挙だ。同級生の森本波音(はのん)さんは銅賞を獲得。来年はペアで出場し、世界の舞台を夢見る。
原則23歳以下の若手が競う大会で、62回目にあたる今年は11月に愛知県で実施された。造園部門は北海道から九州まで26人が参加。制限時間は10時間で、おのおの割り当てられた縦2・5メートル、横3・5メートルの区画を舞台に、石積みや敷石、垣根や植栽などの課題をこなす。
同校では従来3年生が出場してきたが、今回初めて2年生2人が出場。指導歴14年の主任実習助手の若林謙さん(59)は腕試しのつもりで挑ませたが、「2人とも練習の7割にも及ばない仕上がりだった」。厳しい結果を予想していた。
敢闘賞から発表が始まり、銅賞で森本さんが呼ばれた。銀賞3人はいずれも社会人。「ダメだった」と肩を落とした山本さん。そのとき、たった1人の「金賞」としてアナウンスされたのは、自分の名前だった。
中学生のときはゲームばかりで「だらけていた」。勉強は苦手で、どちらかと言えば消去法で選んだ進路だった。1年の冬に技能検定3級を取得したことでやる気が増した。
「石積みで人を魅了しろ」という若林さんの厳しい指導に食い下がり、造園会社に就職した先輩たちが訪れる度に「技を盗んだ」。花の配置には苦手意識があるというが、石積みの配置や加工技術は「天性のセンスがある」と若林さんは評価する。
史上初の高校生、しかも2年生でつかんだ栄誉。だが、「納得のいく出来ではない」と、おごりはない。一つとして同じものはない樹木や花、石を組み合わせてどんな空間を構成するか。楽しみながら技術と感性を磨いている。
来年の技能五輪は2人1組のペア制で、金賞に選ばれると上海での国際大会に出場できる見通しだ。大の仲良しでもある森本さんと息を合わせ、さらなる高みをめざす。
今は朝6時半に家を出て、夜に帰宅する生活。ゲームをするひまもないが、充実した毎日を送れていることをありがたく思う。祖父が大和高田市で竹材店を経営しており、造園の腕を磨いた上で竹のことを学び、ゆくゆくは後を継ぎたい。「野望だらけです」