五回の攻撃前、ベンチ横で円陣を組むと「全然こっから~」とチームを勢いづけた=2024年7月1日午前11時40分、札幌麻生、鈴木優香撮影
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 (1日、第106回全国高校野球選手権南北海道大会札幌地区Hブロック代表決定戦 札幌東5―16とわの森三愛)

 大会前の練習試合では勝った相手だった。「もう1回」。札幌東の伊藤寛太捕手(3年)はシード校のとわの森三愛が相手でも、勝利の再現をねらっていた。

 だが序盤、相手の猛攻を止められず、一、二回に4点ずつ奪われた。

 強風で細かな雨粒が顔に吹きつけ続ける最悪なコンディション。投手たちは苦しんでいた。

 「キャッチャーは守りの要」。自分にそう言い聞かせ、「とにかく俺のミットめがけて楽しく投げて」。笑顔で励まし続けた。

 投手が失点するとすかさずマウンドにかけより、「気負わなくていい」と声をかけ、落ち着かせようとした。

 「少しでも長く野球をしたい」。三回の1打席目。自身3試合連続安打となる、左前安打で出塁すると、続く味方の2安打でチーム最初の本塁を踏んだ。

 五回、攻撃前の円陣で、「全然こっからーっ!」と叫んで反撃を促すと、4番の頼れる後輩、田頭雄太選手(2年)が適時二塁打を放つなどし、3点を返してくれた。でも南大会進出の壁は高かった。

 「チームメートは全力で投げきってくれた。それで打たれたのは、もう相手をたたえるしかない」。約1時間に及んだ「ラストミーティング」を終えると、もう後悔はなかった。(鈴木優香)

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