(1日、第106回全国高校野球選手権南北海道大会札幌地区Hブロック代表決定戦 札幌東5―16とわの森三愛)
大会前の練習試合では勝った相手だった。「もう1回」。札幌東の伊藤寛太捕手(3年)はシード校のとわの森三愛が相手でも、勝利の再現をねらっていた。
だが序盤、相手の猛攻を止められず、一、二回に4点ずつ奪われた。
強風で細かな雨粒が顔に吹きつけ続ける最悪なコンディション。投手たちは苦しんでいた。
「キャッチャーは守りの要」。自分にそう言い聞かせ、「とにかく俺のミットめがけて楽しく投げて」。笑顔で励まし続けた。
投手が失点するとすかさずマウンドにかけより、「気負わなくていい」と声をかけ、落ち着かせようとした。
「少しでも長く野球をしたい」。三回の1打席目。自身3試合連続安打となる、左前安打で出塁すると、続く味方の2安打でチーム最初の本塁を踏んだ。
五回、攻撃前の円陣で、「全然こっからーっ!」と叫んで反撃を促すと、4番の頼れる後輩、田頭雄太選手(2年)が適時二塁打を放つなどし、3点を返してくれた。でも南大会進出の壁は高かった。
「チームメートは全力で投げきってくれた。それで打たれたのは、もう相手をたたえるしかない」。約1時間に及んだ「ラストミーティング」を終えると、もう後悔はなかった。(鈴木優香)