(13日、第107回全国高校野球選手権山梨大会1回戦 日本航空3―0東海大甲府)
甲子園で投げる夢はかなわなかった。昨年の決勝で敗れた日本航空との1回戦。プロ注目の東海大甲府・鈴木蓮吾投手(3年)が再び先発マウンドに立った。
序盤から140キロ台の直球が走っていた。五回を終えて両チームともに1安打の投手戦。緊張が続いた。
六回、痛恨の一打を浴びた。1死二塁、日本航空の4番・平井湊人選手(3年)に投げた内角低めのカーブは右翼へ。送球がもたつく間に、二塁走者が一気に生還した。決して失投ではない。自信の一球だった。それだけに悔しかった。
その後はカーブやチェンジアップを織り交ぜ、力と技で、安打も追加点も許さなかった。「出せる力は全部出した」。充実した表情で、八回までを投げきった。
いきなり訪れた再戦の舞台で、あの悔しさを晴らすつもりだった。昨年の決勝は立ち上がりから制球に苦しみ、先取点を奪われて二回途中で降板。2年連続の甲子園をあと一歩で逃した責任を感じていた。
山梨大会でエースナンバー「1」をつけたのは、優勝した一昨年以来。試合後、報道陣に「おまえに託したぞ、と監督に言われたんです」と言うと、ぽろぽろと涙がこぼれた。
仲沢広基監督は、練習に取り組む姿勢が春ごろから変わったと気付いていた。「ウェートトレーニングを率先してやるようになった。下半身がたくましくなり、投球フォームが安定した」。この日の試合では、四死球を出しても崩れない精神的な強さも感じたという。
「彼は最後の最後にエースになってくれた」。仲沢監督はそうねぎらった。