(27日、春季兵庫県高校野球大会 報徳学園5―0滝川)
球場には、最速150キロ超の滝川の「二刀流」新井瑛太(3年)に注目するプロ球団スカウトが多数集まった。報徳学園の先発左腕、岡田壮真(3年)は燃えていた。
「プロ注目選手がいるチームに勝ったら『俺ら、もっと乗れるぞ』と」
中学時代は外野手だ。1年秋、キャッチボールでの球の強さを見たコーチから「1回、投げてみないか」と、ブルペンで投球を試すように言われたのが転向のきっかけだった。
「軸足の体重移動や足の着く位置など、基本中の基本から教わりました」。大リーガーの今永昇太(カブス)の投球フォームを参考にしてシャドーピッチングを繰り返すと、この1年半で直球は最速142キロまで伸びた。チームメートからも「お前の真っすぐは打たれへん」と言われた。
昨年のチームには、今朝丸裕喜(現阪神)ら世代を代表する投手がいた。春は選抜大会で2年連続準優勝し、夏も兵庫大会を制して全国選手権大会に出場。ただ、新チームになった昨秋は県大会2回戦で敗れた。
「軸になる投手を作りたかった」と大角健二監督。岡田は制球力に課題があったが、「エースに匹敵する力はある」と評価する。だからこそ、あえて背番号を秋の「1」から「11」に変えた。この春は「岡田の大会」と位置づけて、発奮を促していた。
岡田はこの日、大角監督から「四球は10個出してもいい」と冗談めかして送り出されたが、かえって吹っ切れたという。
「思いっきり腕を振ることだけを考えた」。コントロールが安定し、速球も走った。四死球は二つだけ。計107球の省エネ投球で、自身初完投初完封という最高の結果を出した。
選抜に出場した東洋大姫路など兵庫は強豪がひしめくが、「近畿大会で『1』をつけて、夏も『1』つけて、自分がチームを甲子園に連れていく」。自信を深めた左腕の伸びしろは、まだ十分ある。