投票に行きたいけれど、投票所への移動が難しく、行けない――。7月6日に掲載された「ひととき」の訴えに、反響がありました。ある地方在住の高齢の方からのはがきには、投稿者の方と同じように、足腰を痛めていて投票所にも期日前投票所にも行けない、とつづられていました。「投稿を読んで切ない気持ちになった」という、政治社会学者の鈴木規子・早稲田大教授に寄稿してもらいました。(高重治香、長沢美津子)
7月6日掲載の「ひととき」
選挙が来るたび、心ならずも棄権する結果となっております。5年ほどになるでしょうか。
わたしたちの投票所は最寄りの小学校なのですが、行き帰りの坂道がとても急なのです。短い距離とはいえ、腰を痛めている私と、ひざを痛めて杖を使っている91歳の夫には、非常に負担です。
区役所に事情を話して相談したところ、都合のよい時に、期日前投票をしたらどうかと言われました。しかし、地区にある支所は自宅からやや遠く、バス停との距離もあって、行きたければタクシーを頼まざるを得ません。
今回の都知事選は、特に関心をもって見ています。ニュースで候補者たちが取り上げられると、夫と互いの意見も言い合うのですが、最後は「でも、行けないね」で終わります。
わたしたちのように、体力的な理由によって、不本意ながら棄権している人は、数多くいるのではないでしょうか。もっと、簡単に投票ができないものか。日ごろからインターネットは使っていないので、願わくは郵便です。
社会に高齢者は、これからますます増えていくのです。選挙に行きたい。考えてはいただけないでしょうか。
東京都港区 鈴木千鶴子 主婦 86歳
鈴木規子・早稲田大教授「読んで切ない気持ちに」
投票率の低さを問題にする時、注目されやすいのは若者の投票率の低さです。しかし投稿を読んで、高齢者であっても、政治に関心があるのに投票所へ行けないことがあると気づかされました。それも、便利だと考えがちな都心で暮らしていても、です。
代替措置としてしばしば考えられるのがインターネット投票ですが、日頃からインターネットに慣れていない方にとっては、難しいでしょう。どうにか投票できないものかという声に、応える方法はないでしょうか。
私が研究のため滞在中のフラ…