日米首脳会談で握手し笑顔を見せる石破茂首相(左)とトランプ米大統領=2025年2月7日午後0時25分、米ワシントンのホワイトハウス、恵原弘太郎撮影

 石破茂首相とトランプ米大統領が7日、ワシントンで首脳会談を行い、日米同盟の強化などをうたった共同声明を発表しました。両首脳は良い関係を築いたように見えますが、今後の日米関係は順調に進むのでしょうか。第1期トランプ政権時代、ニューヨーク総領事だった高橋礼一郎元駐オーストラリア大使は「トランプ氏と仲が良いだけでは足りない。日本は多国間協力を進め、米国の国際社会への安定的なコミットメントを回復するための努力を重ねるべきだ」と指摘します。

 ――日米首脳共同声明や共同記者会見の印象は。

 私の知人を含め、全体としてうまくいったという評価が多いようです。会談前には「2人はケミストリー(相性)が合わない」という指摘がありましたが、会見と声明を見た限り、日本が想定していたシナリオのなかで終わったようで、良かったと思います。

 ――会談が成功した背景は。

 一つは、4日にあったトランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相との共同記者会見だったと思います。トランプ氏はパレスチナ自治区ガザの住民の移住や米国によるガザ統治に言及し、世界中から批判を浴びました。

 トランプ氏には、日本とはそれほど対立する問題もないことから、フレンドリーにやろうという心理が働いたのではないかとみています。安倍晋三元首相への良い印象が残っているため、石破首相とも仲良くやりたいとも考えたのでしょう。

 トランプ氏が会見で「(日本などを)100%守る」と語ったのは良かったと思いますが、安全保障分野の問題点がトランプ氏の頭にきちんと入っているとは思えません。楽観的にならない方が良いでしょう。

 トランプ氏の主な特徴は三つあります。第一に「外交も内政もビジネスディールのスタイルでやりたい」、第二に「ディールとは一対一でやるもの」だという考えです。トランプ氏は多国間、国際的な協定に縛られることを嫌がります。三つ目は、自分のやりたいことに対する攻撃に、非常に神経質に厳しく反応する傾向があります。

 官邸・外務省はこうした特徴を踏まえ、よく準備したと思います。でも、共同声明でも記者会見でも、ウクライナや中東などグローバルな課題への言及がほとんどありませんでした。第1期政権当時よりも国際情勢は緊迫しているのに、グローバルパートナーシップとしての日米関係は一切感じられませんでした。

 トランプ氏には「日米関係を戦略的に使う」という発想が明確にはありません。共同声明には「自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、絶え間なく協力していく」という文言は入りましたが、協力の具体的な中身は盛り込まれませんでした。楽観は禁物です。

【連載】読み解く 世界の安保危機

ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ300人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。

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