女子ゴルフで国内ツアー通算17勝の上田桃子(38)が3日、今季限りでの競技活動の休止を発表した。2018年から7年間、ともにツアーを戦って2勝を挙げ、最終戦までタッグを組む新岡隆三郎キャディー(51)が上田に贈るメッセージを寄せた。
- 中島啓太を賞金王にした金谷拓実の存在 抱擁して誓ったレースの続き
上田桃子様へ
ももちゃん、あんまり力になれなくてごめんね。
でも、「上田桃子」という選手と同じゴルフ時代を過ごし、なおかつ最後の1球までサポートできることはキャディーの僕にとっての勲章です。
とにかく練習熱心で、連絡をくれるときはいつだってゴルフのこと。2月末から11月までのツアー中は毎週のように試合があるのに、たまにあるお休みの週だって、トレーニングでつぶしてしまう。
みんながプライベートの写真を投稿したり、好きな動画を見たりしているインスタグラムでも、自分に合いそうなゴルフの練習方法を探していたね。
そんなももちゃんだから、今年はつらい時間が多かったと思う。春先に左手首を痛めて、トレーニングができなかった。いつも全力のあなたを見てきたから、競技活動をやめるという決断を聞いたときは、やり尽くしたんだなと思いました。めちゃくちゃ頑張ってきたよね。
中途半端なことは絶対にしない。年齢を重ねても、ももちゃんはいつも「新人」のようでした。
試合に入る前は「私、今週は」と切り出して、取り組むことや目標を口にする。試合が終わると、「なんで私ってこんな下手なんですかね」。でも、また課題を見つけて、また次の週に目標を立てる。その繰り返しに手を抜かない姿が、あなたらしさだった。その気持ちの強さが、すべての勝利の要因だと思います。
一番印象に残っているのは、2019年3月の「Tポイント×ENEOSトーナメント」(大阪・茨木国際GC)。2位で迎えた最終日の朝、右手の中指が強く痛んで、「棄権しようかな」とまで言っていた。
「1回、練習してみない?」。僕がそう言うと、渋々練習場へ。「1ホールだけ行ってみない?」とコースに出ると、みるみる飛距離が戻った。
途中で「ここはスプーン(3番ウッド)ですかね、クリーク(5番ウッド)ですかね?」なんて聞いてくるから、びっくり。手が痛いんだから、迷わず大きい番手で打たなきゃでしょ。気づいたら、優勝していました。技術うんぬんを上回ってしまうくらい、本当に気持ちが強い人。
会見では、メジャー大会で優勝できなかった悔しさを話していた。ただ、プロとしての姿、プレーへの思い……いつもゴルフに全身全霊のあなたの存在こそが、メジャーチャンピオンです。
直接伝えるのは照れくさいから、記事にしてもらいました。残りの試合もよろしくね。
うえだ・ももこ 1986年生まれ、熊本県出身。9歳からゴルフを始め、ジュニア育成の坂田塾で力をつける。熊本・東海大二高を卒業後の2005年にプロテストに合格。07年、国内ツアー初優勝を含む5勝を挙げ、当時史上最年少の21歳156日で賞金女王に輝く。
にいおか・りゅうざぶろう 1973年生まれ、埼玉県出身。埼玉・大宮東高で90年夏の全国高校野球選手権に出場。阪神、近鉄などで活躍した北川博敏は同学年のチームメートだった。現在は、男子ツアーで岩田寛、女子ツアーで上田桃子のキャディーを務める。(構成・平田瑛美)