西日本短大付―山梨学院 八回裏山梨学院1死三塁、山岸のゴロを好捕し、一塁へ送球する三塁手小川=伊藤進之介撮影

 (26日、第97回選抜高校野球大会準々決勝 横浜―西日本短大付)

 2試合で17得点、ランニング2本を含む計3本塁打――。西日本短大付(福岡)は「派手」な試合運びで選抜初の8強入りを果たした。

 強打や俊足の選手の活躍が目立つチームを献身的に支えるのが、自他共に「地味」と認める主将、小川耕平三塁手(3年)だ。

 「野球は自分よりうまい選手がいるので、掃除やあいさつで引っ張っています」

 学業でも特進クラスに所属し、試験前は寮で部員に勉強を教えることもある。将来の夢は「中学の体育教員」という。

「彼がいないとチームが機能しない」

 紅白戦で4番打者になっても、8番を打つ普段通りの進塁打を心がけ、バント安打も試みる。

 出塁すれば、外野の守備位置を必ず指先確認。三塁の守備では速い打球を体にあてて止め、投手がストライクを奪えば、大きな声でもり立てる。

 「脇役」に徹する姿勢を評価し、西村慎太郎監督は主将に指名した。「冷静に周囲を見ることができる。自己主張の強い選手が多い中、彼がいないとチームが機能しないかも」という。

三塁線に横っ跳び好捕、見せた派手なプレー

 新チームになり、昨秋の九州大会で4強入り。「選抜出場有力」とされたが、準決勝で沖縄尚学にコールド負けした。

 今年1月の出場校発表の瞬間、ライブ配信を見つめた選手たちは誰も喜びの声を上げなかった。小川主将は「みんなホッとしたと思う。屈辱的な負け方だったから」と振り返る。

 その悔しさから、チームは冬の練習に熱が入った。「名物」は毎日の練習の初めにやる「100メートル100本の全力走」。20本で少し休憩が入り、合計で1時間ほど続く。「しんどいけど、精神的にも強くなり、試合終盤の粘りにつながる」

 迎えた選抜大会、大垣日大との初戦。小川主将は押し出し死球で1点をもぎ取った。山梨学院との2回戦では初安打を放ち、2四球を選んで3度出塁。持ち前の「地味」な活躍だが、終盤には派手なプレーもみせた。

 4点差の八回裏1死三塁、鋭い打球を横っ跳びで好捕。素早く一塁に送球しピンチの拡大を防いだ。「捕手が(右打者の)内角に構えたので三塁線に打球が来ると思った」。1球をおろそかにしない姿勢が好守につながった。西村監督も「あのプレーがチームを救った」とたたえた。

 選抜が決まってから「目標は優勝」と言い続けた。その理由は「目指さないとたどり着けない。みんなで同じ方向を向いて戦いたい」。帽子のひさしの裏には「不動心」。「自分がぶれたらチームもぶれる。心も頭も自分を保つという思いを込めた」

 26日の準々決勝の相手は優勝候補の横浜。大会前から対戦を熱望していた。「個々の力は相手が上。泥臭く食らいつきたい」

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