4月上旬、横浜スタジアムからほど近いビルの一室に、横浜DeNAベイスターズ編成部のトップ3人が顔をそろえた。

 球団幹部を前に、チームが今後獲得すべき選手を進言するのは、腕こきのスカウトではなく、一般の野球ファン9人だった。

 記者も球団史上初めて、いや球界でも例を見ない会議に同席した。

2024年の日本シリーズで声援を送るDeNAのファンたち=横浜スタジアム、小林一茂撮影

 「DeNAには三浦大輔さん以来、先発の柱になる本格派右腕が定着していない。彼にはその可能性がある」

 東京都の会社員、三宅雅也さん(50)は、高校1年時から動向を追っていたという独立リーグ所属の長身右腕を、動画も使いながら熱っぽくプレゼンした。

 三宅さんはアマチュアの逸材を探して年間50~60試合は地方球場をめぐるという。「全く面識もない選手ですが、一方的な〝愛〟でおすすめします」と猛プッシュした。

 なぜ、三宅さんが編成幹部にプレゼンをする機会を与えられたのか――。

 これは「とっておきの選手をスカウトに推薦する権利付きチケット」の特典だ。

 球団は今季、公式チケットサイト「ベイチケ」とは別に、ファンに特別な体験を提供することを目玉とする「裏ベイチケ」をオープンした。

「裏ベイチケ」を担当する横浜DeNAベイスターズの別所真里奈さん=2025年4月9日、横浜市、清水優志撮影

■家族のプレゼンも…

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