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厚生労働省が入るビル=東京・霞が関
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記者解説 論説委員・浜田陽太郎

 参院選は与党の大敗となった。政府が打ち出してきた政策の実現性が問われる。社会保障、とりわけ年金のあり方への関心は高い。財源確保という難しい課題があるだけに与野党の論戦が期待されたが、あまり盛り上がらなかった。

 自民・公明の与党と野党第1党の立憲民主党はそろって「年金底上げ」を掲げており、争点にならなかった。というのも、3党は6月に閉幕した国会で年金改革法に賛成していたからだ。

 自民は、厚生労働省が練ってきた「基礎年金の目減りを早期に止める底上げ策」を法案からいったん削除し、国会に提出。立憲はこれを「あんこのないあんパン」と批判して復活を要求。与党が歩み寄り修正で合意、法案は1カ月足らずのスピード審議で可決され、6月13日に成立した。

 実際に底上げするかどうかの判断は先送りした。5年ごとに実施され、次回は2029年に結果が出る財政検証を踏まえ決める。

 法案の検討過程では、仮想的なモデル世帯(夫が平均賃金で40年働き、妻は専業主婦)の給付水準の見通しが示された。5年前の見通しより改善するものの給付水準は低下し、特に基礎年金(1階部分)は将来的に3割下がることが繰り返し強調された。

 参院選では「底上げ」という聞き心地のよいフレーズが、使われた。

ポイント

 参院選で大敗した与党と伸び悩んだ立憲民主党は、年金改革でタッグを組んでいた。基礎年金の「底上げ」手段は税金頼みで、国民の理解を十分に得ることが求められる。減税や社会保険料の負担減を訴えた政党が勢いを増し、改革実現への道のりは遠い。

 公的年金は、定額の基礎年金…

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