夢洲から
大阪・関西万博会場のイベントで、介護機器が展示されていた。「Hug(ハグ)」というロボットは、本体の「胸」や前に突き出た「両腕」のような部分にクッションがついている。
足が踏ん張れない人でも、無理のない姿勢で車いすや便座に移動できるという。
万博は新たな技術にふれる機会。自分もこの先、お世話になるかもしれない。何かに体を預けるのは勇気がいるが、意を決してクッション部分に全身を投げ出すようにもたれかかった。
スタッフがボタンを押すと、ゆっくり体が持ち上がる。やや前かがみのまま、まさに抱きかかえられているような格好だ。
介護で腰痛に悩む人は少なくない。トイレまで連れていってあげたいが、抱え上げる大変さから、結局はおむつに頼ってしまう。そんな悩みを解決するために愛知県の電子機械メーカー「FUJI」が開発し、病院や介護施設などで5千台が使われているという。
担当者は、小さくて家庭でも使いやすいことなどを説明した後、こう言った。「介護する人の体も守りたいんです」
支える側の健康も「ハグ」していかないと、介護に未来はない。抱きかかえられながらそんなことを思っているうちに、近くの車いすに座ることができた。
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世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。