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8月8日(2016年) 天皇陛下(当時)が退位の意向をにじませるお気持ち表明

 2016年のこの日、宮内庁は午後3時、天皇陛下(当時)が「象徴としてのお務め」についてお気持ちを示したビデオメッセージを公表した。陛下はこのとき82歳。体力的に衰えを感じるなかで、陛下は「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないか」と胸中を明かし、「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくこと」をひとえに念じると述べた。

 憲法上の立場から直接的な表現を避けてはいるが、天皇の位を次世代に譲りたい思いがにじみ出た内容。切実なメッセージは世間に広く支持され、政治の場で退位に向けた動きが加速する契機ともなった。

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ビデオメッセージで退位への思いをにじませた天皇陛下(当時)=2016年8月8日、宮内庁提供

 「陛下は満身創痍(そうい)の状態。行事が続く際には、合間の休息時に床に突っ伏してしまうのではないかと心配になるほど、お疲れの様子も見受けられる」

 2度目の皇室担当になった2012年春、宮内庁幹部の一人が私にそう明かした。陛下が心臓のバイパス手術を受けて間もない時期だった。

 明治時代に作られた皇室の法律「旧皇室典範」は、天皇を終身在位と位置づけ、戦後の新皇室典範にも引き継がれた。存命である限り、天皇の職務を続けるほかない。天皇陛下が即位したのは55歳。「我々が定年を迎えるころから、陛下は一線での生活が始まる。過酷とも言えるレールを走り続けるしかない」。学友の一人はそう言って、「友人として本音をいえば、気の毒としか言いようがない」と体調を気にかけていた。

 天皇陛下をはじめ、皇族方の活動や皇室に関連する出来事を過去にさかのぼって紹介する「皇室365」を始めました。皇室のあり方が問われる中、公務や宮中行事などのトピックを毎週、担当記者が詳しく読み解きます。

 宮内庁がまとめた、年ごとの公務の日数とその割合のデータに、天皇の職務の過酷さが如実に表れている(年齢は誕生日前の年齢)。

2012年 242/366(…

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