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 「ここは筑後川からも遠いし、災害もなくてよかとこ(良い所)と話しちょった。まさか水が(山の)上から来るとは」。福岡県朝倉市杷木寒水(そうず)地区の塚本潔子さん(77)は2017年7月の九州北部豪雨をこう振り返る。

 線状降水帯が次々と発生し、市内ではわずか9時間で774ミリと、同市の平年の7月の月間雨量の2倍を超える豪雨が発生。流域面積も長さも九州一の筑後川はあふれなかったが、寒水川を含む右岸の支流を中心に河川が氾濫(はんらん)。山腹崩壊によって大量の土砂・流木が広範囲に流れ込む土砂・洪水氾濫が発生し、福岡・大分両県での死者・行方不明者は42人に上った。

 より筑後川の近くに住む梅野佐美子さん(69)も「筑後川ばっかり見ていたら、水が後ろから来た」と語る。

写真・図版
強い雨が降るなか、自宅から荷物を持って避難する住民たち=2017年7月7日、福岡県朝倉市杷木寒水、長島一浩撮影

 政府の浸水対策はこれまで、大河川が中心だったが、近年は支流や中小河川の氾濫被害も相次ぐ。

 24年9月の能登半島豪雨や18年7月の西日本豪雨でも、ハザードマップが未策定だった河川を含む多くの中小河川が氾濫し、甚大な被害が出た。

 実は、20年7月の熊本豪雨でも、1級河川・球磨川だけでなく、支流の氾濫が被害を拡大させたとみられている。

 2020年7月4日午前6時…

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