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神戸大学大学院法学研究科教授の中川丈久さん

 総務省が4月、フジテレビに厳重注意の行政指導をしました。大臣名で社長に手渡された文書には、報道機関として社会的責任に対する自覚を欠いているとの厳しい言葉が並び、再生に向けた取り組みの状況を報告するよう求めています。自主自律が原則のはずの放送局に対して政府がこうした指導をすることをどう考えるべきか。行政指導に詳しい中川丈久さん(神戸大学大学院教授・行政法)は、放送の自由を守るために行うべき指導だと指摘します。

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 ――行政指導に詳しい立場から、フジへの厳重注意をどう見ましたか。

 「放送法の解釈でこれまであいまいだった部分を、この機会に宣言したという意味で重要な指導だと思います。大臣名なのはそのためでしょう。慎重な言い回しをしていますが、端的に言うと、自己規律できない会社は放送免許事業者に値しない、との解釈を総務省が初めて明らかにしたのだと理解できます」

 「そのような重大な法解釈の宣言なので、NHKや日本民間放送連盟に対しても同時に注意喚起の要請文を出したのでしょう」

 ――「初めて」とは。

 「これまで放送局に対する行政指導は、事実をまげて伝えたとか、政治的公平の観点から問題があったといった番組に関わるものが中心でした。法令が明確に規制している出資関係に関するものもありました」

 「しかし今回は企業の体質やガバナンス(統治)の欠落を問題視している。広告離れなどが事業の継続を危うくし、放送に穴があきかねないと憂慮したのだと思います」

自主自律と自由放任は別もの

 ――しかし放送法などは、民放のガバナンス不全を理由に業務改善を求めたり処分したりできる権限を総務省に与えていません。

 「その通りです。しかし、法…

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