空き地が目立つ陸前高田市内。右奥は「奇跡の一本松」=2024年3月、岩手県陸前高田市

 東日本大震災から15年が過ぎる来年4月以降の復興事業への政府支援について、被災した岩手、宮城、福島の各県の首長に朝日新聞が尋ねたところ、約7割が「政府の支援が必要」と回答した。岩手、宮城の両県では半数を超え、東京電力福島第一原発事故の影響が残る福島県では全員が継続を求めた。

 政府は2021~25年度を「第2期復興・創生期間」とし、原発事故からの復興や被災者支援などに計約1.6兆円(福島1.1兆円、岩手、宮城各1千億円など)を投じる。その後の5年間も1兆円台後半の復興予算を確保する方針だが、岩手、宮城では被災者の「心のケア」や被災した子どもへの支援を復興予算とは別枠で一般予算化するなど縮小する方向で、福島の配分は増えるものの、一部で地元負担化も検討し、詳細は今夏に決める。

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 アンケートは沿岸部などの42市町村長と3知事に行い、1月までに全員が回答した。

 回答によると、政府の支援が必要な復興事業について、岩手で13人中5人、宮城で16人中11人、福島は16人全員が26年度以降も「ある」と答え、「ない」が12人(27%)、「わからない」が1人(2%)だった。

岩手、宮城では心のケア、困窮者対策

 支援が必要な取り組みを最大五つまで聞くと、岩手と宮城では、心のケアや子どもの教育支援、困窮者対策など被災者支援の継続が多く、「被災者を取り巻く環境の変化等により、抱える問題も複雑・多様化し、(心のケアへの)支援の継続が必要」(岩手県大船渡市)、「災害公営住宅入居者の高齢化や高い独居率を踏まえると、住民の交流促進やコミュニティー支援の継続が必要」(宮城県南三陸町)、「幼少期に震災を体験した児童生徒らの中には、心のケアや学習支援が必要な人が依然として存在」(仙台市)などの声があった。

 原発事故に伴う避難指示解除後も住民の帰還が進まない福島では、医療や交通など帰還のための環境整備や移住・定住、企業誘致への支援が目立ち、「町面積の8割が帰還困難区域で、復興は始まったばかり」(浪江町)、「人口は震災前の15%。移住を促すため支援が必要」(富岡町)との声があった。

 政府の財政支援の縮小について、心配が「ある」は半分の23人に上り、「復興事業全般に採択要件が厳しくなっていく」(福島県葛尾村)との声もあった。

「被災地には課題、国は柔軟対応を」

 復興まちづくりに詳しい岩手大学地域防災研究センター・福留邦洋教授は「親を失ったこどもの心のケアや集団移転跡地の活用などの長引く課題が残っている一方、人口減少や海水温上昇など、当初の想定を超える事態にも国は柔軟に対応する必要がある。自治体も震災に由来する課題や現状の背景を丁寧に発信してほしい」と話す。

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