北海道新幹線の利用者増加の鍵を握るのが、新函館北斗から札幌までの延伸だ。だが、その時期は2035年度末、30年度末、最速で38年度末と変更を重ねている。その原因はどこにあるのか――。

羊蹄トンネルの工事=2023年8月、北海道倶知安町
  • 新幹線の札幌延伸遅れ、経営苦しいJR北海道にさらなる痛手

 元建設省(現国土交通省)官僚で、道内の地域交通にくわしい佐藤馨一(けいいち)・北大名誉教授(80)に話を聞いた。

 ――2035年度末だった札幌延伸開業時期が30年度末になったのは、15年1月でした。

 「当時、自民、公明両党でつくる与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの座長は、北海道政界に強い影響力をもつ町村信孝衆院議員(故人)でした。札幌延伸を決めたのは民主党政権だったので、自民党が巻き返しのために5年前倒しを決めたと、関係者から聞きました」

 「『金は心配するな』というだけで、当時、技術的な評価はしていなかった。当初、建設主体の鉄道・運輸機構は『事前調査もトンネルの工事計画も作っておらず、無理だ』と抵抗したが、押し切られたそうです」

 ――技術的検討が十分なされる前に延伸開業時期を決めたことが元凶ですか?

 「たしかに政治的な要因は大…

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