Smiley face

 「障害がある私は、救命医療を後回しにされるのではないか」。コロナ禍が始まった2020年春、24時間の介助を受けて神戸市で一人暮らしをする障害者権利擁護団体スタッフの石地かおるさん(57)は、「命の選別」が起こりかねないという不安のなかにいました。それは解消されたのでしょうか。「選別」の根底にあるものは――。新たな感染症に備え、今こそ検証と対策を、と訴える思いを聞きました。

写真・図版
介助者に飲み物を入れてもらう石地かおるさん(左)=神戸市

脊髄性筋萎縮症の障害者 石地かおるさん

 ――新型コロナの感染拡大で、どんな影響がありましたか。

 私は、1歳半のときに「脊髄(せきずい)性筋萎縮症」と診断されました。徐々に筋力が低下する進行性の難病です。特に呼吸する力が弱く、かぜをひいただけでも肺炎になりやすい。今はかろうじて人工呼吸器をつけていませんが、コロナに感染すれば命の危険につながります。

 私は介助者なしでは生きていけません。食事やトイレ、入浴、ベッドから車いすへの移乗など全て介助が必要です。

 感染が拡大し始めた20年初めから外出を控え、今も介助者はマスクを着けて熱気のなかで入浴介助をする日々です。

 23年5月、コロナの感染症法上の分類が5類になり、コロナが終わったかのような風潮もありますが、今もあちこちで感染は起きています。介助者も感染しました。私たちにとってコロナは終わっていない。命の危険と隣り合わせの日常を必死で生き延びているというのが実感です。

写真・図版
石地かおるさんが働く事業所には、コロナ感染防止のためのアクリル板が設置されている=神戸市

人工呼吸器の配分巡る提言に懸念

 ――感染が拡大するなか、「命の選別」への不安が障害者らの間で広がりました。

 第1波が襲っていた20年春ごろ、私もメンバーになっている市民団体の仲間と海外の情報を集めていました。仲間から「ひどいことになっている」と。ネットには、こんな情報が流れていました。

 ルーマニアの障害者施設で感染した職員は病院に入院したのに、入所者は施設内に残された。米国アラバマ州の文書には、健康上の緊急事態が発生した際、患者が人工呼吸器を拒否される可能性のある健康状態として重度の知的障害が挙げられている……。

 国内でも、一部の医療者や研究者らが人工呼吸器の配分を巡り、救命の可能性が低い患者に装着を差し控えざるを得ないといった内容を含む提言をまとめました。

 難病患者や障害者、高齢者ら…

共有