映画「蟻の兵隊」を使って戦争の悲惨さを訴える「特別授業」を行う映画監督の池谷薫さん。スクリーンに映るのは映画中の奥村和一さん=埼玉県新座市北野1丁目の立教大学新座キャンパス

 戦争とは何だったのか。全国の高校や大学を回り、映画を見て対話する「特別授業」を重ねる映画監督がいる。

 ドキュメンタリー映画「蟻(あり)の兵隊」(2006年公開)を撮影し、現在は神戸市の甲南女子大学で映像などを教える教授の池谷薫さん(66)だ。

 6月中旬、立教大学新座キャンパス(埼玉県)の大教室。事前に映画を見ていた学生たちに池谷さんは話しかけた。「映画ってすごいよね。ここに登場する旧日本兵はもういないけど、みんなに語りかけてきただろ?」

 「蟻の兵隊」の主人公、故奥村和一(わいち)さん(2011年、86歳で死去)は戦争で中国に送られる。終戦後も山西省に残され、国民党とともに内戦を戦った旧日本兵約2600人の一人だ。帰国すると、軍の命令で残ったはずが「志願による残留」となっていた。軍籍は抹消され、軍人恩給も受け取れなくなっていた。80歳を過ぎて他の旧日本兵とともに裁判で国と闘った。

 映画では、上官に命じられた…

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