週末は田中吹奏楽クラブの指導員を務める板垣優麻教諭=千葉県柏市

 公立中学校の部活動を先行して地域に移行している地域では、指導者不足を背景に、教員が希望する場合は土日の地域クラブの指導者を兼務することができる仕組みがある。現場ではどう受け止められているのか、教員に聞いた。

「やりたい子を支えたい」

 「音程も大事だけど、曲への思いを伝えられる音にしよう」「音のつながりにこだわる練習を」

 4月19日の土曜日、千葉県柏市の市立田中中学校で、吹奏楽部顧問の板垣優麻教諭がきめ細かに生徒に声をかけていた。この日は部顧問としてではなく「田中吹奏楽クラブ指導員」という立場で、生徒たちもクラブの「登録者」として練習している。

 土日の部活動の地域移行が完了した柏市では、基本的に各学校の部単位での活動を地域クラブが担っており、一般社団法人の柏スポーツ文化推進協会が運営する。昨年度は、クラブ指導者304人のうち約55%にあたる168人が、板垣教諭のような教員の「兼業」だった。土日どちらかの3時間を活動の目安とし、時給1600円を支給している。

 板垣教諭は前任校で、吹奏楽部を全日本吹奏楽コンクールの金賞に導いた。移行当初は「自分の子どもとの時間をとりたい」とクラブ登録をしなかったが、部員全員が週末も登録したことを知り、「やりたい子を支えたい」と考えを変えたという。「これまでと大きな違いはなく、負担は感じていません」

 教員が地域の指導員を兼業することについては、「チームづくりに同じ指導者として時間を費やせるメリットを感じる」と話す。「特に吹奏楽は、平日と週末の指導者が違うと異なる音楽の方向性を示しかねず、子どもたちが迷うデメリットがあります」

現場には断りにくい風潮も

 兼業を希望する教員は、部活の地域移行後の指導者として貴重な人材だが、その割合には地域差がある。移行を進める新潟県佐渡市では昨年度、兼業割合は約6%だった。2026年から平日も含めて地域クラブ化を目指す神戸市では、運動部顧問へのアンケートで、約29%が「今まで通り続けたい」と答えた。

 これまで「強制的」に顧問をさせられてきた教員が、「する」「しない」を選べるようになったのは一歩前進といえる。だが、現場には断りにくい風潮があると訴える教員もいる。

 「指導せずに休んでくれてい…

共有
Exit mobile version