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臨床心理士の東畑開人さん

東畑開人さんの「社会季評」

 「面白いんだよ、みんなが豊かになるんだ」

 スクールカウンセラーをしている友人と話をしているときに、「特別扱い」の話になった。大人の社会だとピリピリし、ハラハラするテーマなのだけど、子どもの社会では少しばかり違うらしい。

 ある小学校のあるクラスに、授業中に立ち、歩き、のべつ幕なしにおしゃべりをし、周囲にちょっかいを出し続ける男の子がいた。授業にならない。担任も困っていたし、クラスの子どもたちも困っていた。そこで、友人も含めた教職員で対策会議がもたれた。

 なんらかの特性もあり、落ち着かないのは理解できる。でも、どうしたらいいのか、良いアイデアは出なかった。すると、担任が冗談を言った。「いっそ先生になってもらいますか?」

 みんな笑って、空気が和んだ。ただ、友人は本質的なアイデアだと思った。「確かに先生って、授業中ずっと立って歩いてるし、しゃべってるし、子どもに話しかけてますよね」。この言葉に担任は思うところがあるようだった。「……ほんとですね、ちょっと考えてみます」

 ある日、男の子は担任補佐の役を仰せつかった。特別扱いでミニ先生になったのだ。みんなの前に立ち、プリントを配り、黒板を消す。ときに問題を解き、児童を当てた。担任にツッコミを入れたり、入れられたりした。

 授業は掛け合い漫才のように…

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