みんなの前でしゃべるのが苦手な子が、初めて教室で発言した。先生が子どもの声により耳を傾けるようになった。
朝の学校で取り交わされる、わずか10分ほどの対話が、各地の教育現場に少しずつ変化をもたらしている。
6月上旬の朝。長野県東御市立和(かのう)小学校の5年生の教室で、大型モニターに一枚の絵画の画像が映し出された。黄、緑、青といった様々な色や、いびつな丸、四角が描かれた抽象画だ。子どもたちの手元のタブレット端末にも、同じ絵が映っていた。
絵を回転させたり描き加えたり
「ようく見るとさ、線がある」
「月に手を伸ばしている」
子どもたちはタブレット画面の気になるところを拡大したり、絵を回転させたり、画面上に線を描き加えたりした。そして、何が描かれていると思ったか、手を上げて発言していった。担任の樋口亜紀子教諭を呼び、小声で思いを伝える子もいる。
教諭はすべての子の発言にうなずき、出された意見の要旨を大きな声でみんなに伝えた。さらに次の問いを出し、テンポ良く次の発言を促していった。
作品に描かれているのは「月」「波」「殺人現場」「天国と地獄」……。子どもたちの想像が膨らんだところで10分間の終わりを告げるチャイムが鳴った。「何か題名つけてみて」。教諭がまとめに入ったときだった。
教室に静かに響いた声
「作業場」と声があがった…