Smiley face
写真・図版
2025年1月20日、ワシントンで開かれた大統領就任式に臨むドナルド・トランプ氏(左)にあいさつするジョー・バイデン氏=ロイター

ミッシェル・ゴールドバーグ

 2022年、ジョー・バイデン氏は再選を狙うには年を取りすぎていると主張するコラムを書いた後、私の考えが間違っていると考える民主党員たちと何度も話し合い、少なくとも一度はケーブルテレビの討論会にも参加した。これらの民主党員が公の場で言っていることと私的な場で言っていることに大きな違いがあったとは記憶していない。バイデン氏の衰えに関する非公式のうわさを耳にしたこともなかった。むしろ、私が話をした当局者や評論家たちは、現職の優位性を党が放棄するのは愚かな行為で、予備選は民主党のさまざまな派閥の間に厄介な亀裂を生むリスクがある、そして何より、バイデン氏が法律制定で多くの成功をおさめたことは、彼が依然として職務にふさわしいことを証明している、と確信しているようだった。

 彼らの中には、私が間違っていると確信している人もいて、私ももしかしたら彼らが正しいのではないかと思ってしまった。こうした疑念こそが、恥ずかしい話だが、私がバイデン氏に退くよう求めるコラムを翌年まで書かなかった理由なのだ。

 多くの人々、特に共和党員にとって、民主党がバイデン氏は基本的に大丈夫だと言い続けたことは、有権者に対する詐欺のように見える。(CNNアンカーの)ジェイク・タッパー氏と(ネットメディア・アクシオス記者の)アレックス・トンプソン氏によるバイデン氏の衰えぶりを描いた衝撃的な新著「原罪(Original Sin)」の中では、バイデン氏の状態がいかに悪化していたかをどうしても認めようとしなかったことを「隠蔽(いんぺい)」と呼んでいる。

自分自身にうそをついた

 確かに、特にバイデン氏の閉鎖的な側近グループの間では、ある程度の隠蔽(いんぺい)が行われていた。しかし、バイデン氏の衰えの進行について国民にうそをついていたというより、あまりにも多くの民主党員が自分自身にうそをついていたのだと私は思う。党の指導者たちが今対処すべき「原罪」とは、集団思考、惰性、そして極端でひどく逆効果となるリスク回避の体質である。

 「原罪」によってバイデン氏…

共有