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壁に飾られた作品の数々=三重県名張市木屋町
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 「医学的処方」といえば、医師が患者に薬などを施すこと。では、「文化的処方」ってなに? その実践拠点となる「まちの図工室」が今春、三重県名張市の旧市街地に誕生した。何をし、何をめざすのか。現地を訪ねた。

 正面の壁には「パールクリーニング本店」の文字が残る。2023年に閉店した同市木屋町の空き店舗を活用したのが、「まちの図工室」だ。絵画や彫刻、木工などができる。「作ることを通じて人々が交流する拠点」で、訪れた人が自由にものづくりができる。

 「管理人」を務めるのは長岡造形大(新潟県長岡市)の山口貴一助教(41)だ。昨年11月に名張に移住した。

 「何かを教えるわけではありません。お金もいらない。自由にワクワクをみつけ、ひととつながってほしい」

 ここは、東京都美術館での取り組みがもとになった「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」のひとつだ。東京芸術大を中心に全国の大学や民間企業、自治体の産官学41機関が参加するプロジェクト。「文化的処方」とは、アートを通じてひとがつながり、孤立や孤独をなくしてウェルビーイング(心身の健康)を実現すること。東京芸術大の日比野克彦学長が、先進的な福祉の実践で知られる名張市に関心を寄せ、市との話し合いの中で「図工室」が生まれた。

 名張市と同様の実践的プロジ…

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