現場へ 能登の文化財はいま(3)
能登半島地震で被災した登録有形文化財がひとつ、今年3月に抹消された。
石川県輪島市の日本海に面して設置された輪島験潮場(けんちょうじょう)だ。元々は、明治期に国内で最初に整備された6カ所の潮位観測施設のひとつ。昭和初期に現在の場所に移転し、「能登に残る最初期の近代建築として貴重」として、鉄筋コンクリート造りの建物が登録された。
験潮場、地震の発生時刻まで観測
しかし、地震で裏山が崩れて土砂の下敷きに。5月に訪れた時は、崩れた岩が散乱して建物は確認できなかった。
後日、国土地理院に確認すると、最後の観測は「2024年1月1日16時10分30秒」。地震の発生時刻とほぼ同じだった。
登録有形文化財の制度のきっかけのひとつは、1995年の阪神・淡路大震災だった。文化財に指定されていない近現代の貴重な建物が次々解体され、保護を求める声があがった。
登録は翌96年に始まった。対象は一定の評価を得た築50年以上の歴史的建造物で、民家や商店など身近な分野にも広がった。
能登半島の七尾市には、登録有形文化財が10軒も集まる地域がある。築100年前後の老舗商店が並ぶ一本杉通り周辺だ。すべてが被災した。
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5月上旬。全壊した高澤ろう…