旧優生保護法の被害者の鈴木由美さん(左)に頭を下げる斎藤元彦知事=神戸市中央区

 旧優生保護法のもとで不妊手術などを強いられた被害者らが26日、兵庫県の斎藤元彦知事と神戸市内で面会した。県はかつて「不孝な子どもの生まれない運動」を推進した歴史がある。斎藤知事は「不適切な施策であり、改めて県知事としておわび申し上げる」と述べ、県知事として初めて被害者に直接謝罪した。

 旧優生保護法をめぐっては、最高裁が昨年7月に違憲と断じる判決を出した。これを受けて被害者らへの補償金支給法が今年1月に施行された。

 斎藤知事は1月の定例会見で、被害者らにおわびの言葉を述べていた。支援団体は斎藤知事に直接の謝罪を求めていて、今回の面会が実現した。

 出席したのは5人の被害者やその家族と支援団体のメンバーら。不妊手術を受けた神戸市の鈴木由美さん(69)は「時間は二度と取り戻せないからこそ、差別のない社会をつくってほしい」と強調した。

 被害者らは「今後二度と同じことを繰り返さないよう、知事として約束してほしい」、「生まれてくるすべての命がおめでとうと言ってもらえる社会になるよう、切に願っている」と伝えた。

「不孝な子どもの生まれない運動」、県が推進

 県は1966年から74年にかけて、「不幸な子どもの生まれない運動」として、障害者への不妊手術の助成などをした経緯がある。

 斎藤知事は「長い間、皆さまがつらい思いをされたことを考えると、私も大変つらい思いがする。県が過去にしてきた施策はするべきではなく、不適切だったのは確かだった」と述べ、深々と頭を下げた。

 県によると、県内では少なくとも1880件の手術が行われたとされるが、補償金支給法を知らないことなどが理由で、補償金の申請は37件にとどまる。斎藤知事は「今後、予算面を含めてしっかり対応していきたい」と話した。

共有
Exit mobile version