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JR男鹿駅の旧駅舎にできた醸造所「稲とアガベ」の前に立つ岡住修兵さん。クラフトサケが飲み比べできるショップも併設されている=2024年4月30日午後2時36分、秋田県男鹿市船川港船川新浜町、平井茂雄撮影
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 日本酒の醸造技術を用いながら、果物やホップなどを加えた新しいジャンルの酒「クラフトサケ」の醸造所が増えている。主な担い手は若い世代だ。世界市場への進出も視野に入れている。

 秋田・男鹿半島のJR男鹿駅脇にある醸造所「稲とアガベ」。2021年9月に岡住修兵社長(35)が設立した。

 旧駅舎を改装した醸造所内には目新しいタンクなどが並ぶ。スタッフは約20人。日本酒の製造過程にホップを加えるなどして、マスカットのような香りが広がるクラフトサケが定番商品だ。岡住さんは「日本酒には認められない副原料を加えられる。味わいの多様性が魅力」と話す。リンゴやブドウを使った酒やどぶろくも手がけ、年間生産量は約4万リットルという。

背景には製造免許の壁

 クラフトサケは、22年に岡住さんを会長に全国7社で発足した「クラフトサケブリュワリー協会」が提唱する新ジャンルの酒だ。日本酒の主な原料は米と米麴(こうじ)で、それらを発酵させたもろみを搾って酒と酒かすに分ける過程が必要だ。クラフトサケは、日本酒では使えない果物などの副原料を加えて搾ったものや、もろみを搾らない「どぶろく」のこと。酒税法上は「その他醸造酒」になる。

 酒を造るには清酒(日本酒)や焼酎、ウイスキー、ビールなど、各酒類別の醸造免許が必要だ。しかし国税庁によると、国内向けの清酒製造免許は少なくとも半世紀以上、原則として新規取得が認められていない。日本酒の需要が低迷し、新規参入を認めると過当競争を招いて倒産が増えるため「需給調整要件」を設けているからだという。

 将来の起業を視野に大学卒業後、秋田県内の酒蔵で日本酒造りの修業をしていた岡住さん。そうした日本酒を巡る免許事情のなかで、「その他醸造酒」の製造免許に着目して始めたのがクラフトサケ造りだった。

 東京都台東区の「木花之(こ…

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