終業式があった7月18日。子どもたちが下校すると、校舎は静寂に包まれた。
東京都品川区立第一日野小学校。3年生のクラスを受け持つ恩田優杏(ゆあん)さん(22)は思った。「初めてのわりには、頑張ったんじゃないかな」。今春、大学を卒業したばかり。無欠勤で1学期を終えた。
7月は、管理職に授業を見てもらう研究授業があり、その準備で手いっぱいだった。息つく間もなく28人分の成績表をつけ、夏休みは希望する子どもが学校で自習する「地域未来塾」の指導に加わった。
保護者との個別面談もあった。どんなことを言われるかと緊張したが、「みなさん優しくて穏やかで」。安堵(あんど)でほおが緩んだ。
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朝8時から立ちっぱなし
5月下旬、恩田さんの学級を訪ねた。10分の「中休み」に、子どもたちが次々と話しかけてくる。「せんせー、トランプやろう!」「校長室行ってきた。ソファがふかふかだったよ」
朝8時に校門で子どもたちを出迎えてから、立ちっぱなし。ようやく座れたのは、4時間目の算数のテストが始まってからだ。とはいえ、漢字ドリルの丸付けを5分ほどすると立ち上がり、見回りを始めた。手を挙げて質問する子どもに、一人一人声をかけていく。
テストが終わり、給食の時間。男子2人が取っ組み合いを始めた。なだめて落ち着かせ、子どもたちが食べ始めてから「いただきます」したのもつかの間。数分でたいらげ、片付けの準備にとりかかる。
子どもたちの下校を見送り、午後3時40分ごろ職員室に戻る。隣の席は学年主任の先生。困ったことやわからないことがあれば教えてくれる頼れる存在だ。授業の進み具合を確認したり、授業で使う教材の準備をしたり、指導計画を書いたり。教室でのクールな顔とは違った、リラックスした表情がのぞく。毎日午前7時半には出勤し、定時は午後4時45分。この日は午後6時に学校を出たが、最初の頃や学期末は午後8時をすぎることもしばしばだ。管理職からは、「早めに帰るように」と言われている。
あえて前向きな気持ちで
進路を考えていた高校2年の…