新校舎建設の断念で、移転予定だった2028年4月以降も南知多中学校として使われることになった=2024年9月2日、愛知県南知多町、臼井昭仁撮影

 愛知県南知多町は2028年4月に開校予定としていた南知多中学校の新校舎建設を断念した。建設費高騰などの影響で事業費が大幅に増える見込みになったため。建設費の高騰や人手不足の問題は、各地で公共事業の遅れを引き起こしている。

 同中は町内4中学校を統合し、昨年4月に旧内海中の校舎で開校。校舎は築約60年経っており、町は旧豊浜中に新校舎を造って、28年4月に移転、開校する計画を立てていた。移転後の校舎は、内海小として使うことにしていた。

 21年に算定した建設費は26億円。その後、地質調査で盛り土部分の補強工事が追加で必要と分かった。さらに建設資材や人件費の高騰で旧校舎の解体・校舎建設費も増え、38億円に膨れあがった。

 町の今年度の当初一般会計予算は86億円。人口減が続く町にとって、歳入のうち4割程度を占める自主財源が今後、増える見込みは少ない。他にも小学校の改築工事などを抱えており、このまま新校舎建設を強行すれば、地方債が積み重なり、町の財政に大きな負担になるとみられ、計画を断念するに至った。

 「これほど費用がかさむようになるとは想定外」と町企画財政課の担当者。ただ、今の校舎が使えるのはもって約20年で、新校舎の建設は避けられないという。「日間賀小学校の建て替え時期など他にもある公共施設の再編計画をすべて見直し、検討する」と話している。

 隣の美浜町。町内7小中学校を統合し、日本福祉大キャンパスに小中一貫校を造る計画を進めているが、28年度の開校目標を30年度にずらすことに決めた。

 今年度、基本計画の策定をしているが、建設業界の人手不足もあって、当初予定の工期が約2年から3年に延びる見通しになるなどしたためだ。算定中の建設費も増える見込み。

 開校を2年ずらしたことで、児童・生徒数は見込みで150人減ることになり、規模の見直しが必要になった。町学校教育課は「公共事業の遅れは影響が大きい。建設費の高騰もこれ以上、進まないでほしい」と話している。(臼井昭仁)

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