インタビューに応える慈恵病院の蓮田健院長=熊本市西区島崎6丁目、伊藤隆太郎撮影

 熊本市の慈恵病院(蓮田健院長)は新生児殺害・遺棄をなくすため、2007年から「こうのとりのゆりかご」に、21年からは「内密出産」に取り組んできた。蓮田院長は産んだ子を殺害・遺棄したとして罪に問われる女性たちの裁判にも証人として出廷する活動も続けている。

 同院は28日、助けを求める女性や自身の出自情報を知りたいと来院する子どもたちへの対応指針を独自にまとめた。そうした状況に追い込まれる女性たちの共通点は何か、どうしたら子どもと女性の命を守れるのか。蓮田院長に聞いた。

  • 「批判でなくねぎらいを」 内密出産の慈恵病院が女性らへの対応指針

「社会的養護の専門家も十分理解していないのでは」

 ――病院に助けを求める女性や、子どもが自身の出自を知りたいと病院を訪れた場合の対応指針を公表されました。その理由は。

 熊本市と慈恵病院は23年5月に専門家による検討会を共同設置し、育てられない子を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」に預けられた子や、周囲に知られずに医療機関で出産できる「内密出産」で生まれた子の出自をどう保障すべきか、専門家による議論を続けてきました。

 ゆりかごを利用する女性、内密出産を利用する女性、そして産んだ子を殺害したり遺棄したりする女性たちには共通点があります。自らの妊娠や出産をかたくなに隠そうとすることです。これは出産前後の支援を必要とする「特定妊婦」とは異なります。

 検討会の議論のなかで、社会的養護の専門家であっても、病院に助けを求めてくる女性たちの日常を十分理解していないのではないかと感じる場面が多くありました。

 政治家や官僚の方と意見交換をする場でも、「日本には特定妊婦の支援や健診、生活保護がすでにある。なぜ新たに内密やゆりかごが必要なのか」と聞かれることがあります。

 自発的な相談や、名前を明かすことを前提とした既存の支援態勢でそうした女性たちを救うことは難しい。内密出産の法制化を求めていくなかで、そうしたことを理解していただく必要性を強く感じました。

 ――ゆりかごや内密、そして産んだ子を殺害したり遺棄したりする女性たちはどんな人たちなのでしょうか。

 21年から11例の新生児遺棄、殺害事件の裁判にかかわり、被告となった女性に面会し、精神科医とともに意見書を書いたり、証人として出廷したりしてきました。

 その結果、妊娠や出産を隠し…

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