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智弁和歌山―横浜 二回表の攻撃を、ベンチから見守る塩健一郎部長=滝沢美穂子撮影

 (30日、第97回選抜高校野球大会決勝 横浜11―4智弁和歌山)

 選抜大会の試合中、智弁和歌山の塩健一郎部長(29)は、新調した赤茶の三つぞろえスーツでベンチに入った。

 選抜出場が決まり、「げんかつぎではないけれど、きちんとした服装で試合に臨みたかった」。智弁和歌山のユニホームのシンボルカラーの赤に近い色も考えたが、さすがにはばかられ、この色にした。

 滋賀県東近江市生まれ。小学2年から硬式野球を始めた。中学2年のとき、横浜市であった全国大会でプレーする姿が慶応大の学生コーチの目にとまり、慶応高校へ。進学した慶応大では学生コーチを務め、神宮球場の試合ではベースコーチにも入った。

 きっかけは、大学の教職課程センターで見つけた「智弁和歌山 教員募集」の掲示だった。講師として採用され、2年目で野球部の部長を引き受けた。「野球で有名。甲子園のベンチにも入れる」。その考えが、甘かった。

 練習試合の調整、高野連などとの交渉。それ以外にも遠征の手配、マイクロバスの運転……。しなければならないことがいくつもあった。

 もちろんグラウンドでの指導も。中谷仁監督が選手に教えてきた「何事も準備が大切」の言葉が、身にしみた。それでも、生徒の成長が何よりのやりがいだ。

 中谷監督にとっても「ほとんど塩部長と僕の2人で(選手指導を)やっている。ここまで来られたのは塩先生のおかげ」と頼りになる存在だ。

 惜しくも優勝は叶わなかったが、次は夏での日本一をめざす。宝物になったスーツだが、「夏の甲子園では結構暑そう」。どうするか、今、思案中だ。

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