視覚障害がある人の歩行を振動や音声でサポートするナビ技術の開発が進んでいる。目が不自由な人にも、自由に、安全に出歩いてもらうのが目的だ。将来的には、障害の有無にかかわらず、誰もが使えるような改良も視野に入りつつある。
6月中旬、仙台市障害者総合支援センター(泉区)近くの歩道で、最新技術を使った視覚障害者向けの歩行支援グッズ「あしらせ」などの体験会があった。白杖(はくじょう)を持った視覚障害者9人が参加した。
「ブルッ、ブルッ」。参加者の靴が振動する。スマホアプリに目的地を入れると、位置情報に応じて靴の中に装着したモーターが震える。
左に曲がるときは、左足の甲部分が、曲がり角に近づくほど小刻みに振動する。進行方向が間違っていると、両足のかかとが震えて教えてくれる仕組みだ。
視覚障害者の中には、方向感覚が分からなくなる不安から、外出を控える人もいる。持病で徐々に視力を失った舞石(もういし)幸江さん(47)=仙台市青葉区=も、その一人だ。
「娘を保育園に迎えに行く道中で、どこを向いているのか分からなくなり、その場でぐるぐる回ってしまった」と舞石さん。体験後に「もしもあの時、あしらせをつけていたら、進行方向が分かって助かったはず」と振り返った。
不足する支援
宮城県内には視覚障害者が約4800人いるとされる。歩行の補助をするヘルパーが所属する施設は88カ所あるが、そのうち57カ所が仙台市内に集中している(2025年3月時点)。ヘルパーの数や補助できる時間には限りがあるため、自由に好きな時間に外出することは難しい。
参加者は、センター内の特殊な「コード化点字ブロック」も試した。丸や三角のマークがついた点字ブロックにスマホアプリをかざすと「前方は出口方向です。左は突き当たりです」といった具合にナビ音声が流れる。
前後左右どの方向から読み取るかで、音声の内容も変わる。東北ではこの場所が初めての敷設だった。
「技術がどこまで進んでも、それだけを頼ってはいけない」。体験会を主催した日本盲導犬協会仙台訓練センター(仙台市青葉区)の大谷孝典さん(39)は、そう訴える。最終的な安全は、自分で確認する必要があるからだ。
あしらせの体験者の中には、道路脇の雑草に足を取られたり、路肩の車に気付けずにぶつかりそうになったりする人もいた。「立ち止まらないと、うまく点字ブロックは読み取れなかった」「振動で曲がり角の近さを判断するのはまだできない」といった声も出ていた。
「目の不自由な人にとって、難易度が高いのは1人で外出すること。その機会を、ナビ技術を通じて少しでも増やしてほしい」と大谷さん。
目指すダイバーシティー
「点字ブロックを必要とする人と、必要としていない人で意識がまったく異なる」。こう語るのは、コード化点字ブロックを開発した金沢工業大(石川県野々市市)の松井くにお教授(68)だ。
松井教授は石川県内の公共施設でも点字ブロック上に案内板が置かれたり、自転車がとめられたりしていることに驚いたという。「目の見える人は点字ブロックの重要性が分かりにくい。ならば、障害の有無にかかわらず活用できるものに」と考案したのがコード化点字ブロック。事前に音声データを登録しておくことで、外国語での音声案内もできる。災害時には避難情報へと切り替えることも可能だという。
一方で、数が不十分で、管理も不可欠という設備面の課題のほか、白杖とスマホを持つと両手がふさがるという問題もある。
ただ、今後、技術開発が進めば、位置情報から半自動で音声案内をすることも実現できそうだという。松井教授は「同じ物を多様な形で使用できる。それこそが私たちが目指すダイバーシティーだ」と語った。
「制度の大幅な変化を」
日本視覚障害者団体連合の吉…