【動画】鹿児島・沖永良部島の3世代で方言継承に取り組む家族に話してもらった=鳴澤大記者撮影
全国で話し言葉の「共通語化」が進むなか、離島の方言が消滅の危機に瀕(ひん)している。テレビ放送の影響もあるが、島外就職・進学時に差別されぬよう矯正した過去も拍車をかけた。直近の言語の「レッドリスト」では、日本も8地域がリスト入り。そのひとつにある鹿児島県の沖永良部島では「島むに(島ことば)」復活に向けた挑戦が始まっている。
「不思議なんですよね。植物は沖縄と同じ亜熱帯ですが家は木造で……」
鹿児島港からフェリーで17時間半、那覇港からは7時間以上を要する鹿児島県沖永良部島。初めて来た琉球大戦略的研究プロジェクトセンター研究員の安元悠子さん(39)は、感じた印象をそう話した。
普段は沖縄方言の記録作業で活動する安元さんは、沖永良部の言葉について、「沖縄と似てはいますが、明確に違います」と言う。
琉球王国を経て薩摩藩入りした歴史は島の文化に彩りを添え、隣の徳之島、また島内の2町にはそれぞれ異なる方言が存在する。ところがその彩りが今、風前のともしびにある。
2009年にユネスコ(国連教育科学文化機関)が存続危機にある世界言語を発表。日本でも沖永良部などを含む「国頭(くにがみ)語」など8エリアの方言が「レッドリスト」入りした。沖永良部島は昨年1月、文化庁など共催の「危機的な状況にある言語・方言サミット」の会場にもなった。
米国で考案された手法
「方言を復興する方法はあるんです」
そう話すのは、国立国語研究所(国語研・東京)の「消滅危機言語の保存研究」プロジェクトリーダー、山田真寛准教授(42)。沖永良部島で国語研が初めて取り組むのは、米国で2000年代に考案された「マスターアプレンティス」という言語継承の手法だ。これは方言を話す「師匠」と学ぶ側が原則1対1で集中的に対話を重ね、新たな話者を育てる方法で、北米で先住民向けに実践、成果をあげ、豪州などでも活用されている。
これまで方言辞書や絵本作りなどを支援してきた国語研は同島で19年度から毎月1回、知名町の施設で方言サロンを開き、辞書の作り方なども伝えてきた。現地で活動する国語研の横山晶子特任助教(37)によると、マスターアプレンティス導入にあたり、島民から参加者を募ると、25人が登録したという。
国語研としてさらなる一手を打てた背景には、沖永良部の島民の「熱量」もある。
同島では、全国の教育現場で実施した方言矯正だけでなく、「島外進学や就職時に差別されないために」との願いから、多くの家庭で共通語が使われた。テレビ放送の影響もあった。
実際、島を訪ねると、なまり…