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「もがみ」型護衛艦の能力向上型のイメージ=三菱重工業提供

 豪州政府は5日、豪州海軍が導入を計画している新型艦について、日本が提案する三菱重工業の最新鋭「もがみ」型護衛艦(FFM)を基にした共同開発を採用すると発表した。豪州のマールズ副首相兼国防相が記者会見で明らかにした。日本が護衛艦を輸出するのは初めてで、「初めての大型の装備移転案件」(防衛省幹部)。護衛艦のような殺傷能力の高い大型兵器の輸出は、戦後日本の武器輸出政策をめぐる大きな転換点にもなる。

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 最終候補は日本の新型FFMと、ドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズの「MEKO A 200」に絞られていたが、マールズ氏は新型FFMについて「豪州にとって最適だ」と指摘。必要な乗組員数が就役中の護衛艦より少ない90人、ミサイル発射セルは32基といった点を挙げた。FFMは「省人化」が特徴で、ドイツの艦艇の乗組員約120人と比べても約30人少ない。豪海軍では装備の老朽化と人員不足が課題となっている。

 レーダーに映りにくいステルス性能にも優れ、豪州の同盟国である米国製ミサイルなども搭載しやすい。来年初めに契約を結んだ後、豪州が求める性能を追加する形で共同開発に入るが、ベースとなる「もがみ型」の建造実績があり、2029年から始まる「納期」を守れる見通しがあることも有利に働いたとみられる。

 豪州は老朽化したフリゲート艦を新型艦11隻に置き換える計画で、総額100億豪ドル(約9500億円)を見込む。11隻のうち3隻を日本で、残りは豪州で建造する。

 日本が開発した完成品の装備品輸出はフィリピンへの警戒管制レーダーに続き2例目。中谷元・防衛相は5日の会見で「わが国の高い技術力への信頼性、自衛隊と豪軍との相互運用性の重要性を評価された証し」と述べ、「豪州との安全保障協力を更なる高みに引き上げる大きな一歩だ」と強調した。

 一方、防衛装備移転三原則の運用指針によると、防衛装備品の輸出は「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に限定されており、護衛艦のような殺傷能力が高い兵器は制限されている。ただし、同盟国や同志国との共同開発・生産であれば移転できるため、今回の護衛艦輸出は日豪の「共同開発」という形を取っている。

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