野球の第32回U18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)第10日は14日、沖縄セルラースタジアム那覇で決勝があり、高校日本代表はアメリカに0―2で敗れ、2023年の前回大会に続く優勝を逃した。
日本は相手先発の150キロ超の速球に苦しみ、3安打に封じられた。先制された四回途中から石垣元気(群馬・健大高崎)を投入したが、流れを変えられなかった。
- LINEグループは「末吉JAPAN」 短期で結束した高校日本代表
「日本の高校野球の良さを見せよう」
敗戦後、高校日本代表の選手たちはグラウンドに散った。歓喜に沸くアメリカ代表が置き去りにした空のペットボトルを拾い集めた。「自分が同じ立場だったら、できただろうか」。小倉全由(まさよし)監督はそう言って目を細めた。
試合は力負けだった。相手右腕の150キロ超の速球をとらえられず。11日の決勝ラウンドではアメリカのミスを逃さず得点したが、この日は「2度は負けないという相手の気迫とパワーに負けた」と主将の阿部葉太(横浜)。
先発で粘投したのは、20人の代表メンバーで唯一2年生の末吉良丞(沖縄尚学)だった。8月末のチーム結成から、3年生は末吉を温かく迎え入れた。選手で作ったLINEグループ名は「末吉JAPAN」。2年生に孤独や不安を感じさせてはいけないという思いからだった。
「末吉を負けさせちゃいけない」と結束したチームは、逆転勝ちが3度と劣勢もはね返し、この日敗れるまでは8連勝と力を発揮した。
小倉監督は選手たちに言い続けてきた。「勝つことだけではなくて、日本の高校野球の良さを見せよう」。選手たちは決勝が終わってなお、その姿勢を貫き通した。
石垣元気「同じ155キロでも力強さがあった」
日本の抑えを務めた石垣元気(群馬・健大高崎)は、1点を先制された直後の四回1死一、二塁で登板した。150キロ超でピンチを抑えたが、五回に3四死球と犠飛で追加点を許した。すでにプロ志望を表明。完封された相手右腕と自身を比べ「同じ155キロでも力強さがあった。世界と戦い、より一層上のレベルでやりたいと思った」。
- 28球で甲子園を去った「高校最速右腕」が世界一へ向けて解放した力
小倉全由監督(日)「1戦ごとにチームになっていった。負けてそのまま終われば本当に負け。この悔しさを上のレベルに行ったときの強さに代えてほしい」
中野大虎(大阪桐蔭)「ピンチの場面が大好きなので、自分の力で乗り切れたのが良かった。送り出してくれた坂原コーチに感謝して最高勝率の賞を受け取った」
為永皓(横浜)「みんなが仲良くなって、誰も一人になることがない本当にいいチームだった。最後の最後まで応援をいただいたおかげでやりきれた」
末吉良丞(沖縄尚学) 「(米国の選手は)体が大きくてパワーが違った。普段かかわれない選手たちから色んなことを吸収できた」
▼表彰選手に中野ら 閉会式で大会の表彰選手が発表された。日本代表からは投手の最高勝率で中野大虎(大阪桐蔭=3勝0敗で10割)、最多盗塁で岡部飛雄馬(福井・敦賀気比=7盗塁)、最多本塁打で今岡拓夢(鹿児島・神村学園=1本塁打)が表彰された。ベストナインには、二塁手で奥村凌大(横浜)が選ばれた。