日本と同じ敗戦国のドイツも今年「戦後80年」を迎えました。敗戦と経済復興という似た道を歩んできた両国ですが、「戦後」の語り方は大きく異なるようです。ウクライナ侵攻を受け、ドイツは今や一種の戦時にある、とも。歴史学者の伊豆田俊輔さんによる寄稿です。

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 まだ私たちは「戦後」にいると言えるだろうか? 6月末、日本ドイツ学会で日本・ドイツ・ロシア(ソ連)の関係から戦後80年を振り返る企画が催された。そこに登壇したドイツの歴史家シュテファン・クロイツベルガーは、対立を繰り返しながらも政治や文化を通じて深い交流を続けてきた独ロ関係の歴史を振り返りこう述べた。目下のウクライナ戦争で、独ロの対話の可能性は事実上なくなった。ロシアの未来のためにドイツができることと言えば、亡命者たちの支援に限られる、と。

 ウクライナ戦争が4年目を迎え、ドイツでは「戦後」の存在感が薄れている。メルツ政権は7月、武力攻撃を受けた際に軍事的手段を含めて支援するとした友好条約を英国と結んだ。国防費の増額にも踏み切り、2011年から停止されていた徴兵検査の再開も検討している。

リトアニアに常駐することになったドイツ軍の軍用車両を撮影するリトアニアの市民ら。ドイツ軍部隊が単独で外国に常駐するのは戦後初めて=2025年5月22日、ビリニュス、森岡みづほ撮影

 なるほど、ドイツと欧州は今、一種の戦時なのである。学会で私が痛感したのは、日独で「戦後」という枠組みが安易に共有できない現実だった。

 一般的に日独は、第2次世界大戦での敗北とその後の経済復興というよく似た道を歩んだと言われてきた。そしてたしかにドイツにも「戦後」の語りはある。だが、その区切り方や中身は日本と大きく異なる。

 ドイツにおいて1945年は…

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