記念誌の製作費を募っている「シベリア抑留体験を語る会札幌」の建部奈津子会長=2025年3月28日、札幌市、日浦統撮影

 今年は戦後80年。北海道内在住の抑留経験者が講演会をする市民団体「シベリア抑留体験を語る会札幌」が記念誌を製作するための寄付金を募っている。かつて15人もいた「語り部」はいまや3人。建部奈津子会長は「ヘイトスピーチのような偏見にあふれた言葉でなく、抑留を経験した人たちの『真実』を語る生の言葉を残したい」と支援を呼びかける。

 第2次大戦後、旧ソ連の独裁者、スターリンによってソ連領やモンゴル領に推計60万人の日本人が抑留された。極寒や飢餓、重労働などで6万人が亡くなったとされる。1年目の冬を越せず落命した人が多かった。厚生労働省のまとめによると、判明しているシベリア地域の抑留中の死亡者約4万人のうち北海道は1737人で東京都に次いで2番目に多い。シベリア抑留者支援・記録センターの有光健氏は「寒さの厳しい満州や北朝鮮には、北海道の兵士を優先的に送るという潜在的な判断が大本営にあったのではないか」と推察する。

 帰国を果たした抑留者も年が経つにつれて減り、平均年齢も高くなった。建部さんが会を設立したのは2015年。札幌在住の神馬文男さん(99)の抑留体験を聞いたのがきっかけだった。

 海軍にいた神馬さんは終戦後…

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