北海道更別村議会議員の斎藤要子さん=2025年4月3日午後3時45分、北海道更別村、日浦統撮影

 「静かな有事」。石破茂首相は今年の年頭所感で、深刻な地方の人口減に伴う経済活力の低下をこう呼んだ。人口減に悩む市町村は移住政策に多額の税金をつぎこむものの、全体の人口が減るなかでパイを奪い合うゼロサムゲームの感は否めない。人口約3千人の北海道更別(さらべつ)村で、夫とともに村議をつとめる斎藤要子さん(59)は、もともと政治学が専門の研究者。過疎地の政治に身を投じて見えてきた、移住政策のいびつさについて、聞いた。

 ――2020年に埼玉県から北海道東部の更別村に移住してきたとか。

 「縁もゆかりもないこの村に来て今年で5年。もともと夫(斎藤憲・大阪府立大学名誉教授)が18年に移り住んでいました。夫に会いに来て、しばらくの間、暮らす。ここはセカンドハウスのような感覚でした。最初は『移住』という言葉を自分のアイデンティティーとして言えませんでした。いつまでいるかわからなかったから」

「村の喫茶店では大事な話はできない」

 ――村の生活はどうですか?

 「近くの喫茶店だと周りに筒抜けになるから、大事な話をする時は帯広市に行く、という話を初めて聞いた時は驚きました。村内には1980年代から鉄道の駅がなく、車が不可欠なので、外でお酒を飲むこともままならない。文化的資源が少ない。休日の医療サービスが貧弱……。苦労はありますが、慣れました。何より夏にはクーラーがほとんどいらない冷涼でゴージャスな気候がありますから」

 ――村議に立候補した動機は?

 「コロナ禍のころ、村の政策…

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